大判例

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大阪高等裁判所 平成11年(行コ)27号 判決

主文

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人の請求を棄却する。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  控訴人

主文同旨。

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二  当事者の主張

一  原判決の引用

1  当事者双方の主張は、次の二、三のとおり附加するほかは、原判決の「第二 事案の概要」欄(三頁六行目から一七頁六行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。

2  ただし、次のとおり改める。

(一) 原判決中「本件二号処分」とあるのを全て「本件前処分」と改める。

(二) 原判決一三頁六行目の次に行を改め、「被控訴人には欠勤の事実はない。本件処分は事実を誤認した無効な処分である。」を加える。

(三) 同一六頁二行目の「あっため」を「あったため」と改める。

二  控訴人の当審附加主張

1  被控訴人が本件受診命令に従わなかった理由

(一) 大江課長は、被控訴人に対し、病気休暇を付与し続けることはできないので、控訴人の指定する病院で診察を受けなければならない旨を説明している。被控訴人は、本件受診命令を受ける必要性ないしは理由を十分理解しており、これを誤解していたということはなかった。

(二) 被控訴人は、本件受診命令が発せられた当時、特例復職期間を経過すれば、病状が回復しない限り、退職せざるを得ないことを既に知っていた。もし本件受診命令に従うと、国家公務員法(以下、国公法という)七八条二号により分限処分を受けるおそれがあることを知っていたことから、そのおそれを回避するため、本件受診命令に従わなかったのである。

2  本件受診命令、同命令遵守義務等

(一) 本件受診命令は、公務の能率的な運営を実現するため、職務専念義務(同法一〇一条)を担保するものとして発せられた職務命令(国公法九八条一項)である。

職務命令には拘束力が認められ、適法の推定を受ける。職員は、職務命令に重大かつ明白な瑕疵があると認められない限り、その職務命令の意義等について特段の説明がなくとも、これに従わなければならない。

(二) しかも、本件受診命令は、被控訴人のそれまでの長期にわたる病気休暇等を前提として、その健康状態を確認するためになされた職務命令である。被控訴人の病気の程度を確認し、職務遂行能力の有無を判断する上で重大かつ不可欠なものであるから、当然これを発する合理的理由がある。

(三) ところが、原判決は、本件受診命令を発するに当たって、その意義等の説明義務を措定し、その説明の内容、程度によっては、これに従わない合理的理由があることを当然の前提としている。

しかし、そもそも、職務命令を発するに当たっての法的義務として、説明義務があると解することはできないから、これに従わなくともよい合理的理由の存否は問題とならない。原判決の判示は、その前提において完全に間違っている。

3  国公法七八条三号と同条一号及び二号との関係

(一) 国公法七八条三号と同条一号及び二号との関係は、必ずしも各号に優先関係があるものではない。同条三号が定める「その他その官職に必要な適格性を欠く場合」の適用は、公務能率の維持及びその適正な運営の確保の観点から、あらゆる事情を総合的に検討して決定することとなる。

(二) 国公法七八条一号及び二号は、いずれも公務員としての適格性を欠く場合の具体的例示である。一号及び二号も、広義においては「その他その官職に必要な適格性を欠く場合」であり、ただ、その重要性や明確性の違いに着目して、三号とは別異の要件として定立されただけである。

(三) このように、国公法三八条三号は、同条一、二号の意義をも内包する包括的な規定と解すべきである。

4  本件処分の適法性

(一) 被控訴人は、休職期間満了後も病気休暇を付与され、結局通算して五年間休職あるいは病気休暇を付与されていた。本件受診命令は、控訴人のような被控訴人につき、職務に復帰することができるか否かの判断資料を得るという目的をもった重要な意味を持つ職務命令であり、適法有効なものである。

(二) 被控訴人は、本件受診命令に従う義務があったのに、再三にわたる説得ないしは命令にもかかわらず、何ら合理的な理由もなく、これに従わなかったのである。しかも、被控訴人は、実質的にも、心身の故障のため職務の遂行に支障があり、本件処分時には職務の遂行に堪えることができない状態にあった。

(三) 被控訴人には、職務に復帰する意欲ないしは可能性に欠け、国公法七八条三号にいう「その官職に必要な適格性を欠く場合」に当たる。控訴人が被控訴人に対し、国公法七八条三号、人事院規則一一―四(職員の身分保障、以下単に人事院規則という)七条三項に基づき本件処分を付したのは、適法かつ正当なものである。

三  被控訴人の反論

1  被控訴人が本件受診命令に従わなかった理由

(一) 被控訴人は、指定医二名の診断による分限免職処分を回避するために、本件受診命令を拒否したのではない。本件受診命令を嫌がらせと感じ、強制入院に対する恐怖によって拒否したのである。

(二) 大江課長は、本件受診命令を発するに際し、人事院規則七条二項に基づく職務命令である旨の説明をしていない。被控訴人も、それが同条項に基づく職務命令であるという認識を持つことができなかった。

2  本件受診命令、その説明義務

(一) 受診命令という概念自体がきわめて反医療的であり、職務命令たりえない。とりわけ、精神医療を巡る状況と、強制入院の可能性という精神医療固有の理由から、精神病者に対しては、受診命令が職務命令にはなりえない。

(二) 仮に受診命令が職務命令たりうるとしても、本件受診命令は、直線の業務とは何ら関連しない上、インフォームドコンセントの理念や精神医療固有の理由から、説明を不可欠とする職務命令というべきである。

3  国公法七八条三号と同条一号及び二号との関係

国公法七八条三号は、「その他その官職に必要な適格性を欠く場合」と規定している。右文言からして、同条三号は、一、二号以外の事由によって適格性を欠く場合である、と解するしかない。七八条二号の事由をもって、三号該当性の判断をすることは許されない。

4  本件処分の違法性

(一) 職務遂行の可能性

被控訴人は、平成三年、四年当時も、午後出勤で軽作業から復帰していくのであれば、職務の遂行が十分に可能であり、心身の故障のため、職務の遂行に支障がある状態ではなかった。現に、本件前処分から本件処分までの間、玉置裁判闘争の事務局を務めていた。また、本件処分から現在までの人事院公平審査委員会、本件訴訟における被控訴人の当事者としての活動からも、被控訴人が郵政職員としての職務の遂行が十分可能であったことが認められる。

被控訴人の職場では、精神疾患の罹患者に対しては、五割の勤務軽減(四時間の就労労働)による復職が認められていた。被控訴人は、本件処分当時、五割の勤務軽減を受ければ、復職は十分可能であった。ところが、控訴人は、特例復職期間経過後、復職を求める被控訴人に対し、このような勤務軽減措置があることを一切知らせなかった。控訴人管理職は、繰り返し復職を求める被控訴人に対し、職場の改善、労働条件の変更を検討せず、完治でなければ復職させない、勤務に就かせない旨答えるばかりであった。

(二) 本件受診命令に従う義務の不存在

本件受診命令には法的根拠がなく、職務命令となりえず、説明義務を怠った本件受診命令は無効であった。被控訴人が本件受診命令に従えば、強制入院の可能性が存した。このように、被控訴人が本件受診命令に従わなかったことに合理的理由があった。

被控訴人が本件受診命令に従わなかったからといって、国公法七八条三号所定の「その官職に必要な適格性」が欠けているとはいえない。

(三) 精神病者の排除

郵政当局は、活性化計画の名で罹病者排除を進めた。諸官庁の中で唯一精神障害者復職等審査委員会を設け、特に精神障害者の復職を妨げるなど、精神障害者に対してもっとも差別的な施策をとってきた。

控訴人は、被控訴人が中途精神障害者になったときから、勤務軽減措置、配置転換等の措置を講じるべきであったのに、そのような措置を一切講じず、被控訴人を職場から排除することで対応しようとした。控訴人には、障害者の雇用促進という発想は一切無かった。

控訴人は、被控訴人が完治していることを復職の条件とした。控訴人は、職場で発症した中途精神障害者である被控訴人に対し、職場の改善による復職と症状の改善を目指すのではなく、職場から排除することを追い求めた。

(四) 障害者雇用促進法違反

障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法という)は、障害者の雇用について、二条の五で国の責務を規定し、一一条で国の義務を規定している。

同法に基づいて制定された障害者雇用対策基本方針は、「精神障害者についても、その障害の特性等に関する正しい理解を促進しつつ、就業環境の整備を通じてその雇用の促進や雇用の継続を図るなど、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を、総合的かつ計画的、段階的に推進していくことが必要である」と定めている(甲一〇三)。

人事院規則一一―四(職員の身分保障)の運用について(昭和五四年一二月二八日任企―五四八人事院事務総長通知)の七条関係は、「国公法七八条二号の規定による免職は、心身の故障の程度を勘案した配置換え、降任その他の措置の可否を考慮するなど、総合的な判断に基づいて行うものとする」と規定している。

本件処分は、このような障害者雇用促進法の精神にも反している。

理由

第一  判断の大要

当裁判所は、大要次のとおり認定判断する。その理由について、後示第二ないし第四で説示する。

一  本件処分に至る経過

1  被控訴人は、昭和五二年四月一日に郵政事務官に任命され、同年四月二二日付で芦屋郵便局集配課勤務となり、平成四年七月六日(本件処分)当時も同課職員であった。

2  被控訴人は、自律神経失調症(抑うつ状態)のため、昭和六二年一二月一四日から通算三年間の休職処分に付されたが、その病状は改善しなかった。そこで、控訴人は、平成二年一二月一四日をもって被控訴人を特例復職させ、同日から通算九か月の病気休暇を付与した。被控訴人は、特例復職期間を経過するも、その病状は治癒しなかった。

3  控訴人は、平成三年九月一四日付で、国公法七八条二号(心身の故障)により、被控訴人を分限免職処分(本件前処分)付した。しかし、本件前処分に際し、一名の医師の診断しかなく、人事院規則七条二項(医師二名の診断)の要件を欠いていた。

そこで、控訴人は、平成三年一二月二一日付で本件前処分を取り消すとともに、被控訴人に対し、同年九月一四日に遡及して病気休暇を付与し、右取消日以降も病気休暇を付与した。

4  控訴人は、平成四年四月、被控訴人の職務遂行能力の有無や職務復帰の可能性を判断するため、人事院規則七条二項に定める医師として大阪赤十字病院医師を指定し、被控訴人を同医師に受診させることにした。そこで、控訴人は、平成四年四月から六月にかけて、前後四回にわたり、被控訴人に対し、同医師の受診を命じた。

ところが、被控訴人は、本件受診命令に応じれば、国公法七八条二号(心身の故障)、人事院規則七条二号により、分限免職処分を受けるおそれがあることから、そのおそれを回避するため、本件受診命令を拒否し続けた。

5  被控訴人は、平成四年七月当時も病状が回復せず、心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、これに堪えない状態にあった。

6  控訴人は、以上の事情を総合して、平成四年七月六日付で国公法七八条三号(職務適格性の欠如)に基づき、被控訴人を分限免職処分(本件処分)に付した。処分説明書には、処分理由として、次のとおり記載されている。

昭和六二年八月から病気療養し、その後三年間休職し、休職期間を満了するもなお引き続き欠勤療養中のため、再三にわたり指定する医師への受診を命じたにもかかわらず、この命令に従わないものであり、国家公務員としてその官職に必要な適格性を欠くものである。

二  本件処分の効力

1  職員が受診命令を拒否した場合の分限免職

次の(一)(二)の要件をもとに充たす職員は、(一)について医師二名による診断がない場合にも、「その官職に必要な適格性を欠く」(国公法七八条三号)職員といえる。

(一)  適格性欠如の要件

(1)  長期の療養若しくは休養を要する疾患又は療養若しくは休養によっても治癒し難い心身の故障があると認められ、その疾患又は故障のため職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないこと。

(2)  この(1)に加え、次の(二)の事由などの行動、態度に徴表される一定期間にわたって継続している状態により、当該職員が官職に必要な適格性を欠くこと。

(3)  現に就いている職務に限らず、配転可能な他の職務を含めて考慮しても、なお、当該職員の疾患又は故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないこと。

(二)  受診命令拒否の要件

(1)  任命権者が、心身の故障があるとの合理的な疑いがある職員に対し、職務遂行能力の有無を把握し、分限免職の要件を充たすか否かを判断するために、特定の医師を指定して受診を命じていること。

(2)  当該職員が正当な理由がなく受診命令を拒否していること。

2  本件処分の国公法七八条三号該当性

被控訴人は、次の(一)(二)のとおり、適格性欠如の要件、受診命令拒否の要件を充足しており、「その官職に必要な適格性を欠く」(国公法七八条三号)職員にも当たる。

(一) 「適格性欠如」の要件の充足

(1) 被控訴人は、昭和六二年八月一七日から平成四年七月六日(本件処分)までのうち出勤した六日以外は、勤務に就いていない。その間、終始、自律神経失調症(抑うつ状態)のため、正常な勤務に就くことができなかった。

(2) 被控訴人は、本件処分当時も午前中に起きることができず、午後半日の就労も無理であった。被控訴人が職場に復帰するには、まず二か月間位の準備期間をもうけ、そののち午後からせいぜい三時間程度の勤務を一、二年間位続ける必要があった。

(3) 郵政省は、勤務に制限を加える必要のある職員について、一定の要件を充たせば五割の職務軽減措置を認めていた。しかし、被控訴人は、本件処分当時、五割の勤務軽減措置の適用を受けて復職することも不可能であった。

(4) 被控訴人は、本件処分当時、次のイロのとおり、心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、これに堪えないことが明らかであった。

イ 被控訴人は、長期の療養若しくは休養によっても治癒し難い自律神経失調症(抑うつ状態)に罹患しており、その疾患のため職務の遂行に支障があり、これに堪えない。

ロ 被控訴人は、現に就いている職務(芦屋郵便局の郵便物の区分け、配達業務)に限らず、配転可能な他の職務を含めて考慮した上でも、なお、前示疾患のため、職務の遂行に支障があり、これに堪えない。

(5) 被控訴人が本件受診命令を拒否するに至った経過、拒否理由に照らすと、被控訴人は、その間の言動に徴表される長期に継続している心身の状態により、官職に必要な適格を欠くものと認められる。

(二) 「受診命令拒否」の要件の充足

(1) 控訴人は、職務遂行能力の有無を把握し、分限免職の要件を充たすか否かを判断するために、平成四年四月から六月にかけて、前後四回にわたり、被控訴人に対し、大阪赤十字病院での受診を命じている。

(2) ところが、被控訴人は、正当な理由がなく本件受診命令を拒否し続けた。

3  本件処分と障害者雇用促進法

被控訴人は、障害者雇用促進法が想定している障害の程度をはるかに越える重い障害のため、職務を遂行する能力に著しく欠けていた。障害者雇用促進法が、国に対し、そのような職員でも、職場環境、勤務条件を根本的に変更してまで、その雇用をあくまでも継続すべき義務を課しているとまではいえない。本件処分が障害者雇用促進法の精神に違反する違法なものであるとは認められない。

4  本件処分の違憲性

心身の故障のため、就業環境の整備や配置換えその他相当な措置をしてもなお、国家公務員としての職務の遂行ができない者や、官職に必要な適格性を欠く者を免職することは、職務の能率維持及びその適正な運営の確保の目的から必要なことであり、合理性がある。したがって、それは障害者や不適格者に対する不合理な差別ではない。

国公法七八条二号、三号は、法の下の平等(憲法一四条)、生存権(憲法二五条)、勤労の権利(憲法二七条)の規定に反しない。本件処分は、国公法七八条三号、人事院規則七条三項の要件を充足する適法なものであり、憲法一四条、二五条、二七条に違反しないことは明らかである。

三  結論

1  本件処分は、国公法七八条三号、人事院規則七条三項に基づく適法なものであり、その裁量権行使を誤った違法があるものとは認められない。本件処分の取消を求める本訴請求は理由がないので棄却すべきである。

2  ところが、原判決は、次のとおり判断して本訴請求を認容しており、取消しを免れない。

(一) 心身の故障を理由に分限処分をする場合には、人事院規則七条二項の要件を充たした上で、国公法七八条二号該当性の有無を判断して処分すべきであり、同条三号により処分することはできない。

(二) 被控訴人が本件受診命令を拒否し続けてきたことについて、合理的理由がないとはいえない。被控訴人が本件受診命令を拒否した事実をもって、被控訴人に職務復帰の意思がなく、職務不適格であると認めることはできない。

(三) 被控訴人には国公法七八条三号に該当する事由は認められず、本件処分は処分事由のない違法なものであるから、取消を免れない。

第二  本件処分に至る経過

一  原判決の引用

原判決「第二の一 争いのない事実」欄(四頁二行目から八頁二行目まで)、同「第三の一 本件処分に至る経過」欄(一七頁八行目から三一頁九行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

二  補正

ただし、次のとおり補正する。

1  原判決中「本件二号処分」とあるのを前示のとおり全て「本件前処分」と改める。

2  原判決一七頁末行目の「二六」の次に「、乙三一ないし三三」を加える。

3  同二二頁八行目の「その後も」から同九行目の「言われ、」までを削る。

4  同頁一〇行目の「治らなければ退職してもらうと」を「同様のことを」と改める。

5  同二二頁九行目の「その際」から同末行目末尾までを削る。

6  同二四頁七行目の「判断した」から同九行目末尾までを「判断した。」と改める。

7  同二六頁八、九行目の「別の医者に替わるよう要請されていると思い、」を削る。

8  同二七頁五、六行目全部を削る。

9  同二八頁一行目から八行目まで全部を削る。

10  同二九頁四行目の「などと言う」から同五行目の「などと言って」までを「と言ったが、被控訴人はこれに」と改める。

11  同二九頁一〇行目の「これらの文書にも、受診を命じる理由は記載されておらず、」を削る。

12  同三〇頁一行目から四行目まで全部を削る。

13  同頁一〇行目から同三一頁九行目まで全部を次のとおり改める。

「(四) 被控訴人が郵政事務官に採用されてからの勤務状況、本件処分を受けるまでの経過は、別表記載のとおりである。」

第三  本件処分の適法性の検討

一  国公法七八条の法意等

1  国公法七八条所定の分限制度は、職務の能率維持及びその適正な運営の確保の目的から、同条に定める処分権限を任命権者に認めるとともに、他方、公務員の身分保障の見地から、その処分権限を発動しうる場合を限定したものである。

2  国公法七八条に基づく分限処分については、任命権者にある程度の裁量権が認められているが、もとよりその純然たる自由裁量に委ねられているのではない。分限制度の目的と関係のない目的や動機に基づいてされた場合、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断された場合、あるいは、その判断が合理性を持つものとして許容される限度を越えた場合には、裁量権の行使を誤ったものとして違法となる。

3  国公法七八条三号にいう「その他その官職に必要な適格性を欠く場合」とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいう。

4  国公法七八条一号ないし三号はいずれも職員の適格性の欠如に関する規定であって、三号はその一般規定であり、一号及び二号は適格性を欠く場合の例示規定である。したがって、心身の故障のため一号の勤務不良に当たる場合(一号と二号の重複該当)や、心身故障のため三号の適格性を欠く場合に当たることもあり得るのであって、一号ないし三号は一定の状態に対する評価の側面を異にするにすぎないものといえる。

5  分限処分が免職である場合は、現に就いている職務に限らず、配置転換が可能な他の職務を含めて、これらすべての職についての適格性の有無を特に厳密かつ慎重に判断することが要求される(以上につき、最判昭和四八・九・一四民集二七巻八号九二五頁参照)。

二  職員が受診命令を拒否した場合の分限免職

1  国公法七八条柱書の委任を受けて、人事院規則は、同条二号(心身の故障)により職員を分限免職するには、「任命権者が指定する医師二名によって、長期の療養若しくは休養を要する疾患又は療養若しくは休養によっても治癒し難い心身の故障があると診断され、その疾患又は故障のため職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないことが明らかな場合」(人事院規則一一―四第七条二項)でなければならない。

他方、人事院規則によると、国公法七八条三号(職務適格性の欠如)により職員を分限免職するには、「職員の適格性を判断するに足ると認められる事実に基づき、その官職に必要な適格性を欠くことが明らかな場合」(人事院規則七条三項)でありさえすればよいとされている。これは、事柄の性質上専門家の判断を要求したもので、実体的要件を付加したものではなく、手続的要件を付加したものである。

そして、もし、職員の実質的な分限免職事由が国公法七八条二号所定の事由であるのに、何らの制限もなく同条三号に基づき当該職員を分限免職できるとすると、人事院規則七条二項が医師二名の診断書を要求し、その認定判断の客観性を担保するために慎重な手続をとることを求めているのを、容易に潜脱できることになる。このような解釈をとることができない。

2  他方、「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない」職員が、正当な理由なく任命権者の指定する医師の診察を拒み続けた場合には、任命権者は、医師二名の診断書を取得することができず、当該職員を国公法七八条二号(心身の故障)に基づき分限免職することができない。

このような場合でも、国公法七八条三号(職務適格性の欠如)に基づき分限免職ができないとすると、正当な理由なくこれを拒否した職員のみが分限免職を免れることになり、不公平かつ不合理な結果を招く。

そもそも、任命権者が、職務の能率維持及びその適正な運営の確保の必要性(前示一1参照)から、心身の故障があると疑われる職員に対し、職務遂行能力の有無を把握し、国公法七八条二号、人事院規則七条二項の分限免職の要件を充たすか否かを判断するために、特定の医師を指定して受診を命じることは、国公法九八条一項の職務命令に該当する(なお、乙七―五一七頁の二〇、最判昭和六一・三・一三訟務月報三二巻一二号二七三九頁各参照)。

したがって、当該職員は、正当な理由がない限り受診命令に従わなければならない。

3  以上の諸事情に照らすと、心身の故障があると疑われる職員で、次の(一)(二)の要件を充たす職員は、(一)(1)について医師二名の診断がない場合であっても、簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因して、その職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められる(前示一3)ときは、国公法七八条二号のほか、同条三号の「その官職に必要な適格性を欠く」職員にも当たる。

(一)  適格性欠如の要件

(1)  長期の療養若しくは休養を要する疾患又は療養若しくは休養によっても治癒し難い心身の故障があると認められ、その疾患又は故障のため職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないこと。

(2)  この(1)に加え、次の(二)の事由などの行動、態度に徴表される一定期間にわたって継続している状態により、当該職員が官職に必要な適格性を欠くこと(前掲最判昭和四八・九・一四参照)。

(3)  現に就いている職務に限らず、配転可能な他の職務を含めて考慮しても、なお、当該職員の疾患又は故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないこと。

(二)  受診命令拒否の要件

(1)  任命権者が、心身の故障があるとの合理的な疑いがある職員に対し、職務遂行能力の有無を把握し、分限免職の要件を充たすか否かを判断するために、特定の医師を指定して受診を命じていること。

(2)  当該職員が正当な理由がなく受診命令を拒否していること。

4 したがって、任命権者は、国公法七八条三号(職務適格性の欠如)の規定に基づき、前示3のような職員を分限免職することができると解するのが相当である。

そして、そのような場合であれば、任命権者が、当該職員には「その官職に必要な適格性を欠く」と認め、当該職員に対し、国公法七八条三号に基づき、分限免職処分に付したことについて、裁量権の行使を誤った違法があるとはいえない(前示一2ないし4参照)。

三  休職制度、休職期間満了後の復職、免職

1  職員が、心身の故障のため、長期の休養を要する場合は、その意に反してこれを休職することができる(国公法七九条一号)。休職期間は三年が限度であり(人事院規則五条一項)、休職期間が満了した場合は、任命権者は当該職員を復職させなければならない(国公法八〇条一項)。

任命権者は、職員が、休職期間満了の際、心身の故障のため、なお長期にわたり勤務できないことが明らかなときは、職務の能率維持及びその適正な運営の確保の見地から、原則として、当該職員を国公法七八条二号により免職すべきことになる。

2  ところで、郵政省と労働組合との間で休職協定が締結され、ほぼ同内容の郵政省職員休職規定が定められている。休職協定及び休職規定の各八条も、前示趣旨を踏まえ、三年の休職期間が満了してもなお休職の事由が消滅しない職員は、その期間満了の日をもって退職とすると定めている(乙二、三)。

3  しかし、郵政省は、実際の運営においては、次のような取扱をしている。

(一) 右三年の休職期間が満了しても職務に復帰できない者に対し、特例として一旦復職(特例復職)させる。

(二) その上で、更に一定期間の病気休暇を付与し、右特例復職期間(特例保留期間ともいう)が経過してもなお職務に復職できない場合に初めて退職させる。

四  本件処分の国公法七八条三号該当性

1  「適格性欠如」の要件の充足

(一) 被控訴人の出勤状況

前示第二で原判決を補正のうえ引用して認定した事実に、証拠(乙九の1ないし13、乙一九〔一部〕、被控訴人本人〔一部〕)、及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

(1) 被控訴人は、昭和五二年四月郵政事務官に任命され、芦屋郵便局集配課に配属され、以後、郵便物の区分け、配達業務に従事した(乙一九、被控訴人本人の供述)。被控訴人の昭和五二年四月から平成四年七月(本件処分)までの勤務状況は、別表記載のとおりである。

被控訴人は、昭和五五年以降頸肩腕障害のため、昭和五七年以降頸肩腕障害及び自律神経失調症のため、昭和六一年以降自律神経失調症のため、正常な勤務に就くことが殆どできなかった。

(2) すなわち、被控訴人は、昭和五五年以降、毎年のように断続的に病気休暇を付与され、昭和五八年一月一五日から通算して三年間の病気休職処分(第一次)に付され、昭和六一年一月一五日休職期間満了のため特例復職し、引き続き病気休暇を四か月間付与されている。

被控訴人は、昭和六一年五月一五日から勤務に就いているが、その後も断続的に病気休暇を付与されている。そして、昭和六二年一二月一四日から通算して三年間の病気休職処分(第二次)に付され、平成二年一二月一四日休職期間満了のため特例復職し、引き続き病気休暇を九か月間付与されている。

(3) 被控訴人は、平成三年九月一四日第一次分限免職処分(本件前処分)に付され、同年一二月二一日同処分を取り消され、遡及して病気休暇を付与されている。さらに、平成四年七月六日第二次分限免職処分(本件処分)に付されている。

(4) 被控訴人は、昭和五六年一月から平成四年七月六日(本件処分)までの約四二〇〇日のうち、出勤して勤務に就いたのは、本件前処分の期間中は別としても僅か合計約五〇〇日にすぎない。年次有給休暇、非番日(勤務を要しない日)、週休日を含めると、勤務しなかった日は、本件前処分期間中を除いても約三六〇〇日で、全日数の九割弱にも及んでいる(乙九の1ないし13)。右勤務に就いた約五〇〇日についても、多数回にわたり二割の勤務軽減措置を受けている(被控訴人本人の供述)。

(二) 被控訴人の第二次休職処分以降の病状等

前示第二で原判決を補正して認定した事実に、証拠(乙一三、乙一六、乙二〇の5ないし29、乙二五、証人大江、証人木村)、及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

(1) 被控訴人は、自律神経失調症(抑うつ状態)のため、昭和六二年一二月一四日から通算して三年間の病気休職処分(第二次)に付され、平成二年一二月一四日休職期間満了のため特例復職し、引き続き九か月間病気休暇を付与された。しかし、その間の被控訴人の病状は一向に良くならなかった(乙一六、乙二〇の5ないし29、証人木村)。

(2) 芦屋郵便局の泉徹治総務課長は、平成二年一二月三日、芦屋郵便局三階小会議室において、被控訴人と応接している。その際のやり取りは、以下のとおりである(乙二五)。

イ 被控訴人は、現在の病状について、泉課長に対し、「かなり回復してきているが、仕事をしようという気力がでてこない。」「医者に言っても完治する見通しは分からないようだし、今の状況ではまだまだ休まなければならないのではないかと思う。」と告げた。

ロ 泉課長は、被控訴人に対し、次のとおり説明している。

被控訴人は、平成二年一二月一四日に特例復職し、特例復職期間が九か月ある。この特例復職期間中に病気が回復し、勤務に就ける状態になれば、事前に主治医の診断書を提出してもらいたい。特例復職期間が満了する平成三年九月一三日までに病気が治癒せず出勤できないときは、退職してもらうことになる。

(3) さらに、芦屋郵便局の大江二三雄総務課長(泉課長の後任課長)も、被控訴人らとの間で、次のようなやり取りをしている(乙一三―一三頁ないし一五頁、証人大江の平成八年一〇月二五日付証人調書一〇頁ないし一五頁)。

イ 平成三年八月一二日の被控訴人宅でのやり取り

(イ) 被控訴人は、大江課長から健康状態を聞かれて、同課長に対し、「夜も眠れない。」「これ以上きつい薬はないと言われているほどのきつい薬を飲んでいる。」と答えている。

(ロ) 大江課長は、被控訴人に対し、「平成三年九月一三日までに病気が治癒せず出勤できないときは、退職してもらうことになる。」と説明している。

ロ 平成三年九月一一日の芦屋郵便局局長室でのやり取り

(イ) 被控訴人に同行してきた工藤弁護士が、大江課長に対し、「被控訴人が引き続き芦屋郵便局で勤めるには、どうしたらよいか。」と尋ねた。

(ロ) 大江課長は、同弁護士や被控訴人に対し、「特例復職の期間がすぎて就労することができるのならば、その旨の診断書を提出することによって復職することができる。」「就労できないのであれば、辞職願いを提出することによって退職になる。」と説明した。

(4) ところが、被控訴人は、特例復職期間(平成三年九月一三日まで)経過後も、本件処分(平成四年七月六日)までの間に、復職に必要な主治医の診断書を提出して、復職(勤務)させてほしいという申出をしたことはなかった。被控訴人は、復職の意思もなく、復職できる(勤務に就ける)状態にまで、病気が回復していなかったためである(乙一六、証人木村)。

(三) 医師の診断等

(1) 診断書の内容

被控訴人からは、昭和六二年八月から平成四年六月までの全期間にわたり、自律神経失調症(抑うつ状態)のため、「休養加療を要する」「安静加療を要する」旨の診断書(乙二〇の1ないし33)が、間断なく延べ三三回にわたり提出されている。

その間に、被控訴人の主治医は、兵庫県立尼崎病院の今川医師から木村クリニックの木村医師に替わっているが、その診断内容に変わりはない。これは、被控訴人の病状に変化がないことを示しており、被控訴人は客観的にも就労困難な状況にあったといえる。

(2) 木村医師の証言内容

木村医師は、被控訴人の本件処分(平成四年七月)当時の病状について、人事院公平審査委員会において、次のとおり証言している(乙一六の三六頁、三七頁、四四ないし五〇頁)。

イ 被控訴人には、抑うつ状態を改善する薬を継続して投与していた。被控訴人の睡眠障害は重い。被控訴人は、本件処分当時も、直ちに復職できる状態ではなかった。

ロ 被控訴人は、本件処分当時も、午前中に起きることができず、起きるのが午後二時、三時になってしまうことがかなりあった。そのため、被控訴人は、午前中から就労することができないのは勿論のこと、午後半日の就労も無理であった。

ハ したがって、被控訴人は、本件処分当時も、職場に復帰するには、まず二か月間位の準備期間をもうけ、徐々に体を就労できる体勢に慣らし、そののち午後からせいぜい三時間程度の勤務を一、二年間位続ける必要があった。

ニ 一、二年といっても、完全に就労できるまでに絶対に一、二年かかるというわけではない。反対に、一、二年たてば、完全に就労できるまでに絶対に回復するというわけでもない。

(四) 勤務軽減措置等

(1) 二割の勤務軽減措置

控訴人は、要軽業者(勤務に制限を加える必要のある者)に対する勤務軽減措置の制度を設け(郵政省健康管理規定三〇条、三四条(2))、健康者のおおむね二割以内(勤務一日八時間の場合は二時間以内)を限度として、勤務軽減を認めている(乙八)。被控訴人も、昭和五六年以降、多数回にわたり勤務軽減措置を受けている(前示(一)(4))。

しかし、被控訴人は、本件処分当時も、抑うつ状態にあって、睡眠障害がひどかった。そのため、職場に復帰するには、まず二か月間位の準備期間をもうけ、徐々に体を就労できる体勢に慣らし、そのあと午後からせいぜい三時間程度の勤務を一、二年間位続ける必要があった。前示(三)(1)(2)挙示の各証拠、弁論の全趣旨によりこのように認められる。

したがって、被控訴人は、二割の勤務軽減措置を受けただけでは、復職することは不可能であった。

(2) 五割の勤務軽減措置

控訴人は、勤務軽減措置の特例制度も設けている。要軽業者(勤務に制限を加える必要のある者)で、その病状が回復期にあり、特例措置の適用により、病態の回復促進効果が医学的に期待しうる者が対象者である。精神疾患についても認められている。勤務軽減の限度は五割(勤務一日八時間の場合は四時間以内)で、特例措置の適用期間は六月以内である(甲三)。

ところが、被控訴人は、本件処分当時、要軽業者(勤務に制限を加える必要のある者)ではなく、要療養者(勤務を休む必要のある者)であった(郵政省健康管理規定三〇条、乙八参照)。しかも、被控訴人は、本件処分当時、復職するとしても、二か月間の準備期間を設け、それから午後からせいぜい三時間程度の勤務を一、二年間位続ける必要があった(前示(三)(2))。被控訴人は、一日四時間の勤務を六か月間続ければ、通常の勤務に服することができる健康状態とはほぼ遠い状態であった。

したがって、被控訴人は、本件処分当時、五割の勤務軽減措置の特例を受けても、復職することは不可能であった。

(五) 小括

(1) 被控訴人は、昭和五六年一月から平成四年七月六日(本件処分)までの約四二〇〇日のうち出勤して勤務に就いたのは合計約五〇〇日にすぎない。右五〇〇日についても、多数回にわたり二割の勤務軽減措置を受けている。頸肩腕障害(当初)、自律神経失調症(途中から)のため、正常な勤務に就くことが殆どできなかったのである(前示(一)、別表)。

被控訴人は、昭和六二年八月一七日から平成四年七月六日(本件処分)までの五年弱の間、本件前処分期間中の約一〇〇日間は別としても、昭和六二年一一月下旬に六日間出勤した外は勤務に就いていない。その間、終始、自律神経失調症(抑うつ状態)のため、正常な勤務に就くことができなかった(前示(二)、別表)。

(2) 被控訴人は、昭和六二年八月から平成四年六月までの全期間にわたり、主治医(今川医師、木村医師)によって、自律神経失調症(抑うつ状態)のため、「休養加療を要する」「安静加療を要する」と診断されている。被控訴人は、その間の病状に変化がなく、客観的にも就労困難な病状にあったことが、医師によっても確認されている(前示(三)(1))。

被控訴人は、本件処分(平成四年七月六日)当時、二割、五割の勤務軽減措置の適用を受けて復職することも、不可能であった(前示(四)(1)(2))。

(3) 以上によると、被控訴人は、本件処分(平成四年七月六日)当時、次のイロのとおり、心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、これに堪えないことが明らかであった。

イ 被控訴人は、長期の療養若しくは休養によっても治癒し難い自律神経失調症(抑うつ状態)に罹患しており、その疾患のため職務の遂行に支障があり、これに堪えない。

ロ 被控訴人は、現に就いている職務(芦屋郵便局の郵便物の区分け、配達業務)に限らず、配転可能な他の職務を含めて考慮した上でも、なお、前示疾患のため、職務の遂行に支障があり、これに堪えない。

(4) そして、後示2(一)(二)で認定する被控訴人が本件受診命令を拒否するに至った経過、拒否理由にも照らし合すと、被控訴人は、その間の言動に徴表される長期に継続している心身の状態により、その官職に必要な適格性を欠くものと認められる。

2  「受診命令拒否」の要件の充足

(一) 事実の認定

前示第二で原判決を補正のうえ引用して認定した事実に、証拠(甲二、甲六ないし八、甲一二、甲八一、甲八二、乙一三、乙一四、乙二〇の32、乙三一、証人大江)を総合すると、次の事実が認められる。

(1) 本件前処分、同処分の取消等

イ 控訴人は、平成三年九月一四日付で、被控訴人に対し、国公法七八条二号(心身の故障)に基づき、本件前処分をした(甲八一、甲八二)。しかし、人事院規則七条二号は、国公法七八条二号に基づき分限免職処分をするには、医師二名の診断を要すると定めているのに、本件前処分をするに際しては、木村医師の診断書しかなかった。同処分にはその手続要件を欠く誤りがあった。

ロ 控訴人は、近畿郵政局からの指摘により、本件前処分には、前示手続要件の不備があることに気付いた。そこで、控訴人は、平成三年一二月二一日付で、本件前処分を取り消す(甲六)とともに、被控訴人に対し、同年九月一四日に遡及して病気休暇を付与し、右取消以後も病気休暇を付与した。

ハ 芦屋郵便局の小森局長は、同大江課長を伴い、平成三年一二月二一日、被控訴人宅を訪問し、被控訴人に対し、口頭で次のとおり告げた(乙一四―六頁、七頁、三八頁、三九頁、乙三一)。

(イ) 本件前処分は、本来、医師二名の診断書により発令すべきものですが、手続上の誤りから、医師一名の診断により発令したことから、本日付けで、本件前処分を取り消します。

(ロ) このことについては、あなたに大変迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。お詫びいたします。

(2) 本件処分等

イ 被控訴人は、平成四年四月上旬、控訴人に対し、「抑うつ状態」「平成四年三月二四日より約三か月間の安静加療を要する」旨記載された同月三〇日付の木村医師の診断書(乙二〇の32)を提出した。

ロ 控訴人は、右診断書の記載から判断して、被控訴人はなお治癒まで相当期間を要する疾患があると認めた。そこで、控訴人は、被控訴人の職務遂行能力の有無や職務復帰の可能性を判断するため、木村医師以外のもう一人の医師に診断してもらい、被控訴人の病気の程度を確認する必要があると考えた。

そのため、控訴人は、人事院規則七条二項に定める「任命権者が指定する医師二名」の一人として、大阪赤十字病院の川越医師を指定し、被控訴人を川越医師に受診させることにした。

ハ 控訴人の命を受けた大江課長は、平成四年四月八日、中尾課長代理とともに被控訴人宅に赴き、被控訴人に対し、次の(イ)のとおり説明し、次の(ロ)のとおり説得した。

(イ) このまま病気休暇を付与し続けることはできない。当局の指定する医師の判断により、今後の措置を考える必要がある。

(ロ) 平成四年四月一〇日、当局の指定する大阪赤十字病院の医師に受診してほしい。

しかし、被控訴人は、「理由が分からない。」「モグリの医者(注、木村医師のこと)に診断してもらっているわけではない。」「行きません。」などと言って、これに応じなかった。

ニ 大江課長は、平成四年四月九日にも、中尾課長代理とともに被控訴人宅を訪れ、被控訴人に対し、前日と同様、大阪赤十字病院で受診するよう説得した。しかし、被控訴人は、「昨日、行かないと言っただろう。」などと言って、これに応じなかった。

ホ そこで、控訴人は、平成四年四月一一日、被控訴人に対し、同月一七日に大阪赤十字病院で受診するよう求めた文書を郵送して、説得した。さらに、控訴人は、平成四年四月一四日、被控訴人に対し、職務命令として、前同様、同月一七日に大阪赤十字病院での受診を命ずる文書をさらに郵送した。しかし、被控訴人は、この命令にも従わなかった。

ヘ さらに、控訴人の命を受けた大江課長は、平成四年五月二七日、中尾課長代理とともに被控訴人宅に赴き、業務上の必要から被控訴人の健康状態を確認する必要がある旨説明し、同月二九日、大阪赤十字病院で受診することを職務命令として命じた。しかし、被控訴人は、これに対してもやはり拒否の態度を示した。

そのため、大江課長は、用意していた控訴人名の受診命令文書を被控訴人に手渡そうとしたが、被控訴人は、「理由も分からないのに受け取れない。」などと言って、これを受取らなかった。そこで、大江課長は、やむをえず、右文書をその場に差し置いた。

ト 小森局長は、平成四年六月四日、大江課長、中尾課長代理とともに被控訴人宅に赴いたが、被控訴人の応答がなかった。そこで、小森局長は、同月一二日に大阪赤十字病院で受診することを職務命令として命ずる文書(甲一二)を、被控訴人宅の郵便受箱に入れておいた。しかし、被控訴人は、この命令にも従わなかった。

さらに、小森局長らは、平成四年六月一五日被控訴人宅に赴いたが、被控訴人の応答がなかった。そのため、控訴人は、同月一九日に大阪赤十字病院で受診することを命じた控訴人名の文書を郵送した。しかし、被控訴人は、この命令にも従わなかった。

チ このような経過を経て、控訴人は、平成四年七月六日付で、被控訴人に対し、国公法七八条三号(職務適格性の欠如)に基づき、本件処分をした(甲七、八)。

(二) 被控訴人が受診命令を拒否した理由

(1) 被控訴人は、平成二年一二月三日(特例復職、病気休暇付与の直前)、平成三年八月一二日及び同年九月一一日(特例復職期間満了の直前)の三回にわたり、芦屋郵便局管理者から、特例復職期間を経過すれば、病状が回復しない限り、退職せざるをえないことを説明されている(前示1(二)(2)ロ、同(3)イ(ロ)、同(3)ロ(ロ))。

ところが、被控訴人は、平成四年四月から六月にかけても病状が回復しておらず、復職が困難な状況であった(前示1(二)(4)、(三)(1)(2)、(四)(1)(2)、(五)(2)(3)、乙二〇の32、33)。

(2) 被控訴人は、平成三年一二月二一日、小森局長から、本件前処分は、本来、医師二名の診断書により発令すべきものなのに、手続上の誤りから、医師一名の診断により発令したことから、これを取り消すとの説明を受けている(前示2(一)(1)ハ(イ))。

被控訴人は、以上の経過から、平成四年四月から六月当時、控訴人が、国公法七八条二号(心身の故障)に基づき、被控訴人を分限免職処分に付するには、医師二名の診断書が必要なことを知っていた。被控訴人も、人事院公平審査委員会での本人尋問で、右事実を知っていたことをほぼ認めている(乙一九―三一頁、三二頁)。

(3) 被控訴人は、平成四年四月から六月当時、本件受診命令の意味を十分に理解しており、本件受診命令に応じれば、国公法七八条二号(心身の故障)により分限免職処分を受けるおそれがあることを知っていた。それ故、被控訴人は、そのおそれを回避するため、本件受診命令を拒否し続けたものと認められる。

(三) 検討

(1) 被控訴人は、昭和六二年八月から九〇日間病気休暇を付与され、その後三年間休職し、休職期間満了後も病気休暇を付与され、通算して五年間弱、病気休職あるいは病気休暇を付与されている(前示1(二)、別表)。

本件受診命令は、このような控訴人について、職務に復帰することができるか否かの判断資料を得るという重要な意味を持った命令であり、被控訴人の病気の程度を確認し、職務遂行能力の有無を判断する上で不可欠なものである(前示2(一)(2)イロ)。被控訴人には本件受診命令を発する合理的な理由があり、本件受診命令は適法、有効なものである。

しかも、大江課長らは、被控訴人に受診を説得し、あるいは命じた際に、業務上の必要から被控訴人の健康状態を確認する必要がある旨説明し、その後も、繰り返し文書又は口頭で、受診を命じている(前示(一)(2)ハないしト)。

(2) 本件受診命令は国公法九八条の職務命令である。被控訴人は、正当な理由がない限り本件受診命令に従わなければならない義務があった(前示二2)。

ところが、被控訴人は、平成四年四月から六月にかけて、大江課長らからの何回にも及ぶ受診の説得や受診命令に対し、何ら正当な理由もなく、むしろ国公法七八条二号による分限免職処分を回避するという不当な目的で、言を左右して本件受診命令を拒否し続けているのである(前示四2(二))。

(3) 以上によると、本件受診命令については、次のイロの受診命令拒否の要件を充足しているものと認められる。

イ 控訴人は、平成四年四月から六月にかけて、四回にわたり、心身の故障があるとの合理的な疑いのある被控訴人に対し、職務遂行能力の有無を把握し、分限免職の要件を満たすか否かを判断するために、大阪赤十字病院の川越医師を指定して受診を命じている。

ロ ところが、被控訴人は、本件受診命令に従わなくともよい正当な理由なくして、本件受診命令を拒否し続けた。

3  まとめ

前示1(五)(3)(4)の事実、2(三)(3)の事実によると、被控訴人は、適格性欠如の要件(前示二3(一))、受診命令拒否の要件(前示二3(二))を充たす職員であり、本件処分当時、その官職に必要な適格性を欠くことが明らかであったことが認められる(前示二3、4参照)。

したがって、控訴人が被控訴人に対し、国公法七八条三号、人事院規則七条三項に基づき行った本件処分について、その裁量権行使を誤った違法があるものとは認められない。

五  被控訴人主張の検討

1  処分説明書の記載

(一) 被控訴人の主張

(1) 本件処分の処分説明書には、被控訴人が「休職期間を満了するも、なお引き続き欠勤療養中」との記載がある。

(2) しかし、被控訴人は、休職期間満了後欠勤した事実はない。本件処分は、事実を誤認した無効な処分である。

(二) 検討

(1) 本件処分の処分説明書(甲八)の処分の理由欄には、次のとおり記載されている。

(被控訴人は、)芦屋郵便局集配課勤務の者であるが、昭和六二年八月から病気療養し、その後三年間休職し、休職期間を満了するもなお引き続き欠勤療養中のため、再三にわたり指定する医師への受診を命じたにもかかわらず、この命令に従わないものであり、国家公務員としての官職に必要な適格を欠くものである。

(2) 被控訴人の昭和六二年八月から本件処分までの経過は、別表記載のとおりである。被控訴人は、平成二年一二月一四日、三年間の病気休職期間満了のため特例復職し、引き続き病気休暇を付与されている。前示処分説明書に記載された「欠勤療養中」とは、病気休暇により勤務に就かないで療養していたことを表現したものであることが明らかである。

「欠勤療養中」の記載は正確さに欠けるところがあるが、このような趣旨で事実と合致するものであり、事実誤認ではない。

(3) したがって、処分説明書に「欠勤療養中」と記載したことが事実誤認であるとする被控訴人の主張は理由がない。

2  障害者雇用促進法違反

(一) 被控訴人の主張

(1) 障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法という)は、障害者の雇用について、二条の五で国の責務を規定し、一一条で国の義務を規定している。

(2) 同法に基づいて制定された障害者雇用対策基本方針は、「精神障害者についても、その障害の特性等に関する正しい理解を促進しつつ、就業環境の整備を通じてその雇用の促進や雇用の継続を図るなど、障害の種類及び程度に応じたきめ細やかな対策を、総合的かつ計画的、段階的に推進していくことが必要である」と定めている(甲一〇三)。

(3) 人事院規則一一―四(職員の身分保障)の運用について(昭和五四年一二月二八日任企―五四八人事院事務総長通知)の七条関係は、「国公法七八条二号の規定による免職は、心身の故障の程度を勘案した配置換え、降任その他の措置の可否を考慮するなど、総合的な判断に基づいて行うものとする」と規定している。

(4) 本件処分は、このような障害者雇用促進法の精神にも反している。

(二) 検討

(1) 被控訴人は、前認定のとおり、昭和五六年一月から平成四年七月六日(本件処分)までの約四二〇〇日のうち、勤務に就いたのは約五〇〇日にすぎない。昭和六二年八月一七日から平成四年七月六日までの五年弱は、僅か六日勤務に就いただけである(前示四1(一)、同(二)、別表)。

被控訴人は、本件処分当時も、自律神経失調症(抑うつ状態)に罹患し、睡眠障害がひどかった。そのため、職場に復帰するには、二か月位の準備期間をもうけ、そののち午後からせいぜい三時間程度の勤務を一、二年間位続ける必要があった(前示四1(三)(2))。すなわち、被控訴人が復職するには、六割ないし八割もの勤務軽減措置を一、二年間も続ける必要があった。

被控訴人は、前認定のとおり、本件処分当時、自律神経失調症(うつ状態)のため、長期の療養若しくは休養によっても治癒し難い心身の故障が続いている。そのため、被控訴人は、現に就いている職務(芦屋郵便局の郵便物の区分け、配達業務)に限らず、配転可能な他の職務を含めて考慮した上でも、なお、当該疾患のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないことが明らかである(前示四1(五)(3))。

すなわち、被控訴人は、本件処分当時、心身の故障のため職務遂行能力を著しく欠いており、控訴人が定めている五割軽減措置の特例を受けても、復職することはできない状態であったと認められる(前示四1(四)(2))。被控訴人は、障害者雇用促進法が想定している障害の程度をはるかに越える重篤な障害のため、職務を遂行する能力に著しく欠けていたというほかない。

(2)  障害者雇用促進法は、国に対し、被控訴人のように職務を遂行する能力が著しく欠けている職員でも、一旦任用した以上は、職場環境、勤務条件を根本的に変更し、六割ないし八割にも及ぶ勤務軽減措置を講じて、当該職員の雇用をあくまでも継続しなければならない業務まで課しているとはいえない。

何故ならば、障害者雇用促進法が国にそのような業務を課しているとすると、国公法七八条が分限免職制度を定め、心身の障害のため職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない職員ないし官職に必要な適格性を欠く職員について、その意に反して免職することができると規定している同条二、三号の立法趣旨の大半が失われ、公務の能率維持及び適正な運営の確保ができなくなってしまうからである。

(3) そもそも、任命権者は、職員が、病気休職期間満了の際、病気のためなお長期にわたり勤務できないことが明らかなときは、職務の能率維持及びその適正な運営の確保の見地から、原則として、当該職員を国公法七八条二号により免職すべきことになる(前示三1)。

しかし、控訴人は、被控訴人の身分保障の見地から弾力的な取扱いをし、三年の休職期間が満了した後、被控訴人を特例復職させ、さらに九か月間もの病気休暇を付与している(前示三3、四1(二)(1)、別表)。しかも、控訴人は、被控訴人に対し、一度は本件前処分に付したが、後日これを取り消したため、結果的には、前後一九か月間もの病気休暇を付与している(前示四2(一)、別表)。

ところが、被控訴人は右一九か月もの病気休暇を付与されても、依然として、自律神経失調症(抑うつ状態)の症状が重く、現に就いている職務(郵便物の区分け、配達業務)に限らず、配転可能な他の職務を含めて考慮した上でも、なお、当該疾患のため、職務の遂行に著しい支障があり、又はこれに堪えないと認められる(四1(五))。

これでは、職務の能率維持及びその適正な運営の確保の見地から、被控訴人は国公法七八条三号に基づき分限免職となってもやむを得ない。

(4) 以上の点に照らし、本件処分が障害者雇用促進法の精神に反した違法なものと認めることはできない。

第四  本件処分の違憲性の検討

一  国公法七八条二、三号の違憲性

1  被控訴人の主張

本件処分は、形式的には国公法七八条三号(職務適格性の欠如)を、実質的には国公法七八条二号(心身の故障)を根拠にするものである。しかし、国公法七八条二、三号は、以下のとおり、違憲の法律に基づくものであるから、本件処分も違憲である。

(一) 国公法七八条二号は、精神障害者を障害(心身の故障)の故に職場から排除することを容認するものである。障害者に対する不合理な差別(憲法一四条違反)であり、不合理な差別欠格条項として、憲法二五条(障害者の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)や二七条(障害者の勤労の権利)に違反するものである。

(二) 国公法七八条三号も、実質的に同法二号に該当することを適格性判断の一内容とする限り、同様に憲法違反である。

2  検討

(一) 国公法七八条は、職員が、「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合」(同条二号)、「その他その官職に必要な適格性を欠く場合」(同条三号)においては、人事院規則の定めるところにより、その意に反して降任し、又は免職することができると規定する。

(二) 心身の故障のため国家公務員としての職務の遂行ができない者や、官職に必要な適格性を欠く者を降任したり免職することは、職務の能率維持及びその適正な運営の確保という公益目的から必要なことであり、合理性がある。これは障害者なるが故の不合理な差別ではない。

(三) 国公法七八条二号、三号が、法の下の平等(憲法一四条)、生存権(憲法二五条)、勤労の権利(憲法二七条)の規定に反しないことは明らかである。被控訴人の前示1の主張は採用できない。

二  本件処分自体の違憲性

1  被控訴人の主張

(一) 控訴人は、被控訴人を復職させる意思を全く持たず、被控訴人が精神病者であることのみを理由に、被控訴人を職場から排除することを目的として、本件処分を強行したものである。

(二) 本件処分は、憲法一四条、二五条、二七条に違反する。

2  検討

(一) 被控訴人は、前示のとおり、三年の病気休職期間(昭和六二年一二月一四日から平成二年一二月一三日)を経過し、九か月の特例復職期間(平成二年一二月一四日から平成三年九月一三日)を経過するも、自律神経失調症(抑うつ状態)が回復せず、心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、これに堪えないことが明らかである(前示第三の四1(五))。それに、被控訴人は、前示のとおり、何ら正当な理由なくして、控訴人の数回にわたる受診命令に従わなかった(前示第三の四2(三)(3))。それ故、被控訴人は、国公法七八条三号(職務適格性の欠如)、人事院規則七条三項の要件を充足すると判断して、本件処分をしたのである。

(二) 控訴人は、被控訴人が精神病者であることのみを理由に本件処分をしたものではない。本件処分は、前示のとおり、国公法七八条三号、人事院規則七条三項の要件を充足する適法なものである(前示第三の四3)。そうであれば、本件処分が憲法一四条、二五条、二七条に違反しないことは明らかである。被控訴人の前示1の主張も採用できない。

第五  結論

一  以上によると、本件処分は、国公法七八条三号(職務適格性の欠如)、人事院規則七条三項の要件を充足する適法なものである。また、本件処分には、その裁量権行使を誤った違法はない。したがって、被控訴人の本訴請求は理由がないので、これを棄却すべきである。

二  よって、被控訴人の本訴請求を認容した原判決を取り消し、本訴請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官吉川義春 裁判官小田耕治 裁判官紙浦健二)

別紙別表<省略>

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